転職の年収交渉、本当に切り出していいのか

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3年前、転職の最終面接を通って提示された年収を見たとき、正直そんなものかと思いながらそのまま受け入れた。交渉なんて生意気に思われそうで怖かったし、内定を取り消されたら元も子もないと考えたからだ。半年後、同じ会社に転職した知人が自分より年収60万円高い条件で入社していたと知ったときの気持ちは、今でもはっきり覚えている。損をしたというより、自分の値段を自分で下げていたことに気づいた瞬間だった。あの一言を飲み込んでいなければ、と何度も思い返した経験がある。

なぜ年収交渉をしない人ほど、後で情報格差に泣くのか

求人票に書かれている年収レンジは、たいてい下限に近い数字で提示される。企業側からすれば、交渉されなければそのまま契約できた方が都合がいいわけで、最初から上限を出す義理はない。つまり黙っている人は、企業にとって一番ありがたい候補者になっているだけなんですよね。

厄介なのは、この事実が転職活動中には見えないところだと思う。同期や同業種の人がいくらで契約したかなんて、普通は聞けない。結果として、自分だけ低い条件で契約したことに気づくのは、たいてい入社してしばらく経ってからになる。恥ずかしさよりも、知らなかっただけで損していたという事実の方が、後になって効いてくる感覚がある。

しかも一度提示された年収は、入社後の昇給の起点にもなる。最初の数十万円の差が、3年後、5年後にはさらに開いた形で残ってしまう。転職のタイミングというのは、実は年収を見直せる数少ないチャンスで、それを無条件で見送っているとしたら、正直かなりもったいないと思う。

求人票の年収レンジ、上限が出る人はどれくらいいるのか

転職エージェント経由で話を聞くと、レンジの上限で内定が出るのは、たいてい即戦力として評価された一部の候補者に限られるらしい。逆に言えば、多くの人は下限からせいぜい中間あたりで契約している。ここで自分から一言交渉しただけで、中間より上に押し上げられるケースは珍しくないという話も聞いたことがある。

つまり年収は、企業が最初から決めきった一点の数字ではなく、ある程度の幅を持った交渉の余地がある数字だということになる。この前提を知っているかどうかだけで、交渉するかしないかの判断はかなり変わってくると思う。

実際、自分が登録していたエージェントの担当者からも、同じ求人に応募した候補者の中で、一言だけ条件について確認した人とそうでない人とでは、最終的な提示額に開きが出ることが珍しくないという話を聞いたことがある。企業側もある程度の交渉が入る前提で予算を組んでいるケースがあるらしく、聞かなければそのまま下限で決まるだけ、というのが実態に近いようだ。

交渉が怖い人ほど、AIに交渉の台本を作らせた方がいい理由

自分は今、6つのツールやサイトをAIで自動運用しているけれど、一番最初にChatGPTを転職の場面で使ったのは、実はこの年収交渉の練習だった。想定される質問と、それに対する切り返しをテキストで出してもらい、それを声に出して読む練習を10回ほど繰り返した。

具体的には、企業側から今の提示額についてどう感じているか聞かれた場面を想定して、返し方を3パターン出してもらい、自分の状況に合わせて言葉を微調整するという作業をしていた。やってみて驚いたのは、AIが出してくる交渉フレーズが、思っていたよりずっと控えめで丁寧だったことだ。

生意気に聞こえるかもしれないという不安は、実際に文章にしてみるとほとんど的外れだったとわかる。感情で怖がっていただけで、言葉自体は普通のビジネス会話の範囲に収まっていた。台本があるだけで、本番での言い淀みが減るのも大きかった。頭の中だけで考えていたときは何度もシミュレーションが止まっていたのに、文字にして声に出す作業を挟むだけで、驚くほど気持ちが軽くなった感覚がある。

台本づくりで実際に役立ったのは、否定から入らない言い回しだった。他社の選考状況と比較して、もう少し上の水準で検討できないか相談したい、という趣旨を、感謝の言葉から始めて丁寧に伝える流れにするだけで、印象はかなり変わる。

もう一つ効果があったのは、金額そのものより先に、入社後にどう貢献できるかを一言添える順番だった。条件面の話を切り出す前に、この会社で頑張りたい気持ちを伝えておくと、交渉というより相談という空気になりやすい。この順番はAIに何度も出力させて初めて気づいた工夫で、自分ひとりで考えていたら思いつかなかったと思う。

行動しないコストを計算してみると、意外と大きい

仮に年収交渉をせず、本来もらえたはずの年収より年間30万円低い条件で契約したとする。それが3年続けば90万円、5年続けば150万円の差になる。しかもこの差は昇給のベースラインにも乗ってくるので、実際の損失はもっと膨らむ可能性がある。

一度きりの数分の会話を避けただけで、これだけの金額を失うかもしれないという事実は、知っておいて損はないと思う。行動しないことにもコストがある、という感覚は、転職活動中はなかなか意識しづらい。内定通知を受け取った直後は、条件面より早く落ち着きたいという気持ちの方が強くなりがちで、だからこそ多くの人がその場で流されてしまうんじゃないかと思う。

さらに言うと、転職は一生に一度きりではない。2回、3回と転職を重ねる人にとっては、最初の交渉で作られた年収の水準が、次の転職時の相場観の基準になることも多い。最初の一歩で下振れした条件が、その後の転職活動全体に影を落とす可能性があるという意味でも、最初の交渉は軽く見ない方がいいと自分は思っている。

自分で言うのが怖いなら、交渉を代行してくれる相手を使う手もある

自分で年収交渉のセリフを言うのがどうしても苦手な人には、転職エージェントに交渉を任せるという選択肢もある。エージェントは企業との間に立つ立場上、候補者本人が言いにくい条件面の話を、いわば代理人として伝えてくれる。

大手だとリクルートエージェントを見てみるのように交渉実績が豊富なところもあるし、dodaを見てみるは年収査定のデータを持っているので、相場感を確認しながら進めやすい。中堅企業や専門職に強いマイナビエージェントを見てみるも、業界ごとの相場感を教えてもらいながら条件交渉を進めやすいという声を聞く。複数のエージェントに同時登録して、条件面だけ代行してもらうという使い方をしている人も自分の周りには多い。

実際にAIで練習してから交渉した結果、年収はどう変わったか

自分がAIで台本を作って交渉の練習をしてから転職活動に臨んだところ、提示された年収380万円に対して、最終的に420万円まで引き上げてもらえた。差額にすると40万円で、数分間の会話としては悪くない結果だったと思う。

3年前に何も言わずに受け入れていた自分と比べると、同じ怖さを感じながらも行動を変えられたこと自体が、正直かなりの手応えだった。金額以上に、自分の市場価値を自分で確認できたという実感の方が大きかったかもしれない。台本を用意して臨んだだけで、これだけ結果が変わるのかと素直に驚いた。

面白かったのは、交渉の結果そのものより、条件面を落ち着いて話せたことで、入社前から対等な立場でやり取りできている感覚が持てたことだ。給料の話を先に済ませておいたおかげで、入社後も条件面のことを引きずらずに仕事に集中できている。準備さえしておけば、怖がっていたほどのことではなかったというのが、今の正直な感想になる。

年収交渉は、生意気とか図々しいとかいう話ではなく、単に情報とタイミングの問題だと今は思っている。切り出すかどうかで迷っている人は、まずAIに台本を作らせて声に出してみるところから始めてみるといいかもしれない。一度声に出してみると、頭の中で怖がっていたものと、実際に口にする言葉との間にかなりの差があることに気づくはずだ。

同じように交渉のタイミングで悩んでいる人向けに、面接前日の準備や職務経歴書の書き方についても別の記事でまとめているので、あわせて読んでみてほしい。

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